ひだまり日記

6月号:水分を摂ること

 今回は水分についてお話します。

 前々回、徘徊の方に水分を差し上げていただきたいと書きました。必死になって徘徊なさる方(目指す場所に向かってまっしぐらに歩いておられます)、ご自身は喉の渇きを感じておられないことがあるようです。「喉が渇いたこと」と「飲みたいこと」が一致しないのかもしれないですが。水分は確実に失われていますので何か飲ませてあげてください。スポーツドリンクが一番良いのですが…。

 一般的にご高齢になられると水分摂取量が少なくなるようです。病気の関係で水分制限を受けておられる方は別として、一日に1500cc前後は摂っていただきたいです。夜お休みになる前にも、出来れば水分を摂ってください。トイレのことがご心配かもしれないですが、睡眠中の発汗等で水分が失われ血液が濃くなり、梗塞の原因になることもあります。

 介護をなさっていらっしゃる方はこれからの時期、特に注意して差し上げてください。唇がカサカサしているときは、水分補給が必要です。また、舌の表面が黒っぽく(黒飴をなめたあとのように)なっているのも水分不足・唾液の分泌不足です。飲み物を飲むことのほかに唾液の分泌を促すために、梅干を目の前に置いたり、身体に差し障りがなければ口に含んでいただくといいです(飴でも良い)。その他の方法として、咽と顎の境目あたりを軽く押すと唾液がジワーっと出てきます。そっと押すだけで大丈夫ですからこの方法で口の中を湿った状態にしてください。食事が摂りやすくなりますし、お話しもしやすくなります。ぜひ試してみてください。

 飲み込みが悪くなった方が普通に水分を飲むとむせる事があります。苦しいので水分を摂りたくないとおっしゃるかもしれません。こういうときは、ゼリーにすると飲み込みやすい場合があります。緑茶・水・ポカリスエットなど何でもかまいませんのでゼリーにします。特に暑いとき、冷やしたゼリーは気持ちよいので召し上がってくださると思います。ただし、ゼラチンはカロリーがありますので、寒天(固いと危険な場合があるので柔らかめに)や市販のトロミ剤を使うのも良いです。

 いずれの場合も、飲むとき・食べるときは完全に目が覚めている状態、身体は出来れば起こした状態にしてください。高齢になると食道と気管を開き分ける弁の動きが悪くなるために嚥下(のみこみ)がスムーズに行かないのです。まして、半分眠っているような状態だと神経も半分眠っているので危険なのはお分かりでしょう。また、一度試してみるとお分かりになると思いますが、ベッドを斜め(リクライニング)にした状態で飲んだり食べたりするのは苦しいですし危険です。出来るだけ普通の姿勢に近づけてください。意外と気づかないものですが、私達はかなり前傾姿勢で飲食しているのです。こぼさないためもあるのでしょうが、食道に無理なく入る飲み込みやすい姿勢なのです。

 「吸い飲み」が難しいことはご存知ですか?自分で持って、自分のペースで飲めればそれほど難しくはないのですが、介助されるととても飲みづらいものなのです。飲み込む準備が出来ていない咽に多目の量が流れ込んだりするからです。誤嚥性肺炎(ごえんせいはいえん)は水分でも起きますから、お使いになるときは十分に気をつけて少量づつ差し上げてください。

 たかが「水」のことと思わないで下さい。ご自身のことをうまく訴えられない方、渇きを感じない方など、様々な状態があります。命に直結します。お医者様にも一日どのくらいの量がその方に必要なのか・どういう摂取方法が良いのかなどをきちんとご相談なさって「脱水症状」にならないよう十分お気をつけ下さい。

 過ごしづらい梅雨・そして暑い夏が来ます。どうぞ御自愛ください。

(ひだまり日記 2003年6月号掲載分)
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# by hidamari-blog | 2003-06-28 14:20 | 高齢者

5月号:大切な散歩のときのヒントを

 今回はまずお礼を申し上げたいと思います。デイサービスひだまりは雨が降っていない限り毎日散歩に出かけます。利用者の皆様は散歩をとても喜んでくださいます。道々、お庭の花や木を眺め、わんちゃんや猫ちゃんに声をかけ「おおはしゃぎ」で歩きます。そのときに「裏にある花も見てください」「お雛様、家の中で見ていいですよ」などと街の皆様があたたかいお声をかけてくださいます。これは私が地域にボランティアグループを作った目的の一つでした。声を掛け合える街、笑い合える街はお互いに助け合える街だと信じているからです。前回書きましたが、痴呆の方が安心して徘徊できる街がいいなと思っているのです。その第一歩が皆様からのあたたかい言葉から感じられるのです。また、ひだまり日記を読まれた方からもたくさんの応援をいただいています。皆様、本当にありがとうございます。これからもよろしくお願いいたします。

 本題ですが、足腰の弱られたお年よりと歩く時のことを書いておきます。

 まず、手をつなぐ・腕をつかむ・介助者の腕をつかんでもらうことが大切です。出来れば手をつなぐのはやめたほうがいいです。転びそうになったとき、位置が低くて引き上げられないし、手が離れやすいからです。腕を組み合う事も危険。介助者も一緒に転倒してしまいます。腕をつかむことが一番良いと思います。よろけたとき、引き上げやすい位置に介助者の手があるからです。とはいえ、支えられたくない方も居られると思います。その場合は目を離さないこと。そして、介助者の利き手はお年よりの背中がわ・ウェストベルトのあたり、反対の手はいつでも出せるようにしましょう。

 思いもよらないところでつまづきますので、万全の注意が必要です。目が悪くなっておられる方の場合、段差や勾配が見にくいので「下り坂」「縁石」「店の入り口」等の説明を加えること。さらに顔のあたりに木の枝が垂れていることがあるので注意が必要です。また、暑くなると手をつなぐ・腕をつかむことが辛くなります。お互い暑いですし、汗ばんで気持ちが悪いでしょう。手にハンカチをはさむこと、つかむ位置にハンカチを巻いたり腕カバーをしたりする配慮が必要です。必ず、「自分のためではなく相手への配慮である」ことを伝えます。相手が必要ないと言われたら止めておきましょう。

 それから、杖のことです。杖を過信しないことです。杖を使うには、握力・腕力が要ります。その方に合った長さもあります。おしゃれに使う杖は別として、本当に必要な場合は福祉用具のお店(信頼できるところ)で、体の状態に合うものを選びましょう。目が見えにくい場合は二俣川のライトセンターに相談なさるのが良いと思います。高齢になってから「白杖」を使いこなすのはとても難しいことだと思いますが、目が見えにくいことを周りに知ってもらうためには大切なことかもしれないです。音で時間を知らせる時計など便利な品物をいろいろ教えてくれますので一度行かれる事をお勧めします。

 散歩…簡単そうですが、足腰が弱られた方にとっては危険がいっぱいです。でも、外に出ることはとても大切です。ご家族にとって、時間的にも体力的にも大変だと思いますが、時々連れて行ってあげてください。お年よりのスピード、目線で歩くといつもは見ていないような物がたくさん見えて楽しいです。ひだまりのスタッフはいつも得をしているのかもしれないですね。ありがとうございました。

(ひだまり日記 2003年5月号掲載分)
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# by hidamari-blog | 2003-05-28 13:22 | 高齢者

4月号:何で徘徊してしまうの

 徘徊という言葉は痴呆高齢者のイメージそのものになってしまうぐらい、問題行動として取り上げられます。痴呆と診断された方全てが徘徊をするわけではありませんが、介護される方にとって日常生活に大きく影響してしまう症状であることは事実です。徘徊(帰宅願望)が強いとショートステイを断られることもあるようです。特別養護老人ホームのショートステイが断ることは無いと思うのですが、その他の施設の場合徘徊に対応できる施設設備が無いこと、職員体制がとられていないこともあって断らざるを得ないのでしょう。

 徘徊するご本人は必死です。家に帰らなければいけない(生家・一番思い出のある家・建て直す前の家など様々)・しごとにいかなければならない(自分が一番輝いていたころの職場)・子供を迎えに行く・買い物に行くなど。“早く行動しなければいけないのにどこだか分からない場所に自分はいる”のです。出かけようとするのですが、あちらこちら鍵がかかっていて出られない。そばにいる人に「出かけたい」と頼むと、「もう少し待って」と言われたり、無視されたりするのでますますあせります。「ここはどこだろう?自分はどうしてここにいるのだろう?早くここから逃げなければ…」と混乱が増します。恐怖になっていきます。施設にいるときだけではなく、在宅でも同じです。今住んでいる家がずっと住んでいる家であったとしても、ご本人の「記憶の家」とは違うことがあるからです。(ご本人の意識が現在40歳・50歳であれば家はもっと新しいはず、周りにいる人ももっと若いはず)そのような状況から必死で逃げたいのですから最悪の場合、鍵やドアを壊してでも脱出してしまいます。この繰り返しは痴呆の状態を悪い方向に進めます。

 徘徊に出ようとするとき、止めずに出かけさせてあげ、頃合を見計らって上手に連れ帰れることが一番良いのです。言うのは簡単ですが実際一日に何回も繰り返されると、介護者のほうは安心してトイレにいくことも眠ることも出来ません。

 痴呆の一症状が永遠に続くことはなく、徘徊もいずれ治まります。でも、いつ終わるか分からない状態に介護者が心身ともに疲れてしまうと後が続きません。どうか、うまく福祉サービスを使ってください。ショートステイを使うと、後が悪くなると言うのを聞いて利用を控える方が居られます。確かに前記したように、知らない場所に置き去りにされたと思い、混乱して状況が悪化することはあります。だとしても、日々の厳しい介護生活に一息いれなければいけません。主たる介護者が倒れたら家族全部の生活が危機的な状況になってしまうのです。ご相談をうけていると、あまりにも疲れて「自分が倒れてぎりぎりの状況になれば、家族や親戚に本当の大変さが分かると思う。倒れるか逃げるかしたい」とおっしゃる方が居られます。よく分かります。でも、実際にそうなると数日介護から離れられても、家族との関係や後始末がもっと大変になってしまうようです。人の目や実情を理解してくれない親戚の方の意向を気にせず、ショートステイを使う決心をしてください。なかには意外と順応して「ホテルに行ってきた」と平気な顔で帰ってこられる方も居られますからとにかく試してみてください。

 一般の皆様にお願いします。街中で様子のおかしいお年寄りを見かけたら思い切って声をかけてみてください。「様子がおかしい・時期に合わない服装をしている・前方を見つめて必死で歩いている・やたらと多くの荷物を持っている・逆に何も持っていない」などがポイントでしょうか。なんとなく様子が変?と言うのが一番合っているのですが。「どちらにいらっしゃいますか?」と声をかけ、とんでもない場所を言っていたらまず間違いないでしょう。(背中や上着の襟裏に住所や名前が書いてある場合もあります)「お疲れのようだから一服されたらどうですか」というようなことを言って様子を見ながら地域ケアプラザや警察などの公的施設に連絡していただけると〔徘徊高齢者SOS〕という組織ができていますので対応してくれます。

 また、これからの季節は脱水症状をおこしやすいので、もし余裕があれば水分を差し上げていただけると助かります。(冬は凍死の危険性、夏は脱水から死に至る危険性があるのです)もしも、その場で声をかける余裕が無かったり、あまり関わりたくなかったら「うろうろしているひとがいる」ことだけ警察などに連絡していただけますか。それで十分です。心配している家族の方にとって町の人々の協力は心強い味方です。よろしくお願いします。

(ひだまり日記 2003年4月号掲載分)
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# by hidamari-blog | 2003-04-28 12:57 | 認知症

3月号:介護保険の説明を(つづき)

 前回に続いて介護保険についてお話します。

 ケアマネジャーが決まればケアプラン作成になります。ケアマネジャーが皆様に情報提供できるサービスは多岐にわたっています。ホームヘルプ、デイ、ショートステイのほかに、手すりをつけるなどの住宅改造、福祉用具のレンタル、配食等。さらに一般のサービスでは足りない部分を地域の社会資源(ボランティアなど)を使って埋めることも含まれます。但しケアマネジャーは広い地域を担当しますので、各地域の情報を全て把握しているわけではありません。もしご存知でしたら皆さんのほうから「こういうボランティアがある」と教えてあげてください。他の利用者さんのためにもなることですからぜひお願いします。

 まず、「どんなサービスを使いたいか」聞かれます。聞かれても、はじめはどんなサービスがあるのか・自分たちが使えるのかどうか、などわからないことばかりでしょう。このときに大切なことは、利用者さんご本人もご家族も、正直にこれまでの経過と現在の状況をお話しになることです。日々の生活、介護生活の中で「しんどい」と感じる内容があったらそれを必ず伝えてください。例えば…。掃除機をかけると息切れして辛いけど何とかやれる(無理をすれば出来る…は続きません)・・・ここはホームヘルパーの出番です。お風呂に一人では入れなくなった、家族が入れてくれるけど休みの日だけだから一週間に一度しか入浴できない、もっと入りたい・・・入浴サービスの出番です。このようにしてプランを立てていくのです。後から追加していくことが出来ますからいつでもケアマネジャーに相談してください。もちろん、100%希望どおりになるわけではないと思いますがとにかく話してみてください。

 要支援・要介護1~5、各ランクで利用可能な点数が違います。点数は全国一律ですが、一点をいくらに換算するかは地域差がありますので点数=金額ではありません。点数の範囲でケアマネジャーがプランを立てますが、実際に利用したサービスの費用の一割と一部の必要経費(デイサービスの食材費等)は実費として利用者さんが支払うことになります。点数分全部使わなければいけないわけではありません。また、点数をオーバーした分や介護保険対象外のサービスは全額実費になりますがもちろん利用できます。実際にサービスを使っていく中で、このサービスは無くても大丈夫と思えばやめる事も可能です。その分を他に振り分けることも出来ます。住宅改造については金額・回数など色々決め事がありますので、特に細かく打ち合わせるほうが良いと思います。

 ご利用希望の多いデイサービスも、いろいろなニーズに応えられるように各事業所が特徴を持ってきました。土日利用可能なところ、利用時間が長いところなど。現在は満席でも空きが出ますので、とりあえず空いているところを利用しながらご自分の条件に合ったろころを探してもらうように話しておくといいでしょう。

 ひだまりは居宅介護支援(ケアマネージメント)を行いませんので、細かいことまでお伝えできません。担当になったケアマネジャーのかたと出来る限りコミュニケーションをとって、よりよい在宅生活になさってください。まもなく桜が咲きそうですね。

(ひだまり日記 2003年3月号掲載分)
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# by hidamari-blog | 2003-03-28 12:55 | 福祉サービス

2月号:在宅サービスを分かりやすく

 介護保険の見直しが始まっています。様々なサービスが提供され、利用される方が増えている分だけ問題点も多々出てきているようです。皆様も何か介護サービスをお使いかもしれませんが、分かりにくいことがあるかと思い少し取り上げてみます。
介護保険の対象になるサービスは大きく分けて「在宅サービス」と「施設サービス」の二つになります。間違えないでいただきたいのは「施設サービス」というのは「入所」ということです。特別養護老人ホームや老人保健施設に入所して生活をすることです。デイサービスやショートステイで施設を利用することは施設サービスではなく「在宅サービス」です。ホームヘルプサービス・デイサービス・ショートステイの三つが在宅サービスの大きな柱です。ご本人が現在居られるお宅で(住民票がなくてもご本人が生活されている事実があればその場所で申請できます)必要なサービスを受けながら生活を続けていらっしゃることです。「施設サービス」は主に施設で生活なさる(外泊や入院は可能です)ことになります。

 ケアマネージャーも「在宅サービス」と「施設サービス」とは別です。在宅生活の間、相談に応じ介護プランを作成してくれたケアマネージャーも入所が決まった時点で契約が終了し、施設付きのケアマネージャーにバトンタッチします。

 ご高齢の方でお一人暮らしの方。なんでも一人でやれてきたけれどこの頃、体がきつくなった・不安になってきた・入院して体力が落ちたなどと思われたことはありませんか?また、お年寄りとの生活でお世話することに「疲れた」「このままだと自分がつぶれてしまう」とお感じになることはありませんか?いずれも黄色信号から赤信号に変わる時です。すぐに「役所の福祉保健サービス課」に電話しましょう。「介護サービスを利用したい」といえばよいのです。介護保険の認定を受けているかどうか聞かれます。受けていなければ「認定調査の日程」に進むはずです。役所のケアマネージャーか地域ケアプラザのケアマネージャー(在宅介護支援センター)がお宅に訪問しご本人と面接して認定調査をします。後日、かかりつけのお医者様から提出された意見書を合わせて審査会にかけ、認定がおります。すでに認定を受けていれば「ケアマネージャーの選択」の話しになるはずです。リストの中から自分で選びます。先ほど認定調査のケアマネージャーが出てきましたが、その人たちは基本的にはこれから先は関わりません。一般の施設にたくさんいるケアマネージャーから選びます。

 医療的なサービスを主に受けたい場合(リハビリやパウチの管理など)は、病院や訪問看護ステーションなどのケアマネージャーが良いようです。そうでなければ、ご近所の評判などを聞いて選ぶことが良いでしょう。ケアマネージャーが介護サービスの鍵を握る重要な人物になりますので出来るだけ情報をとりましょう。ただ、介護保険は契約制度ですから、選んだケアマネージャーが合わなければ、契約を解除して選びなおせばよいのです。

 次回も介護保険についてお話する予定ですが常に心にとめて置いていただきたいのは、主役はご利用者の方々です。決して小さくなって「お願いする」必要はないのです。皆さんの大事な方、または生活の一部分とはいえご自分自身の心と身体を預けることになるのですから、絶対に遠慮・妥協しないことです。

 ひだまりは在宅サービスの一端であるデイサービスを提供する事業所で(昨年4月1日から)、NPOとしての活動も在宅生活支援です。何かあればご質問、ご相談ください。

(ひだまり日記 2003年2月号掲載分)
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# by hidamari-blog | 2003-02-28 12:54 | 福祉サービス

1月号:耳が・目が不自由になったとき

 耳が遠くなること、目が見えにくくなること。年をとってくればあたりまえの事です。ところが、このあたりまえのことはご本人と介護家族をとても苦しめます。

 "耳が聞こえない"・・家族が目の前にいるのに、音を消したテレビのように口をパクパク動かしているだけなのです。その人たちの声がどんな声か知っているのに自分の耳に入ってくる音の中にその聞きなれた音が無いのです。耳の近くで話してくれればやっと聞き取れるが少しでも距離があると聞こえないのです。家族もつらいです。大きな声を出さないと聞こえない、忙しいときでもそばに行って耳元で話さなければならない。一回で分かればいいけれど何回も聞き返されるとイライラしてつい声を荒げてしまう。面倒だから話し掛けたくない。お年寄りは声を荒げられると恐いですから聞き返さず適当に返事をします。聞き取れていませんから失敗をしてしまい、結局家族に迷惑をかけ疲れさせてしまうという悪循環。

 “目が見えにくい”・・・慣れた家の中では動けますから家族は見えにくいぐらいと思うのですが、実はほとんど見えないということが結構あります。好きだった針仕事も出来ない・テレビも音だけ・ゲートボールも出来ない、何もすることがありません。目の不自由な方は他の感覚が研ぎ澄まされていくといいますが、高齢で視力が落ちた場合、他の感覚が鋭くなるにはかなりの時間を要するようです。テーブルの上のものを手探りでこぼさずにとること・上手に食事をすることなどは本当に難しいです。突然話し掛けられても、自分が話し掛けられているのかすらわかりません。音がどこから出ているのか聞き分けること・声だけで誰なのか判ることはとても難しいようです。症状が進んで視力がなくなると光を感じることも出来なくなります。今が朝なのか夜なのかも一人では判断できません。家族の行動やテレビ・ラジオの音で判断することになります。

 それぞれこの様な状況の中でお年よりは苦しみ、恐怖や不安から逃げるために痴呆の症状を呈してきます。家族は活動しているのに自分には出来ることが無い。自分の殻に閉じこもるしかなくなります。思い出すのは昔のこと、バリバリ頑張っていたこと・自分を必要としていた人たちがいたこと…。時間は酷なほどたくさんあるのです。想い出もあふれるほどあります。何回も何回も繰り返し考えているうちにだんだん現実と思い出の境がわからなくなるのです。

 新しい情報は入る余地がなくなります。これが痴呆そのものなのかもしれないですね。耳が聞こえなくなること・目が見えなくなること。いずれも孤立(複数の人の中にいるのに一人ぼっちになってしまうこと)してしまうわけです。人間は孤独には耐えられるけれど孤立には絶えられないのだそうです。想像以上に家族の忍耐・努力が必要ですが、どうか独りぼっちにしないであげてください。お年よりは怯えているのですから…。

 耳が遠い場合は、聞こえのよいほうの耳元でゆっくり話してあげてください。ラップの芯などを使って話すと聞き取りやすいです。ジェスチャーを入れるとさらに分かりやすいです。メモ帳を用意して書きながら話すのも良いですね。聞き取りにくい言葉もありますので、別の言葉に置き換えることも大切です。「みんなで笑うとき」には特にさびしく感じるようですから、何が面白くて笑っているのか、かいつまんで話してあげてください。

 目が見えにくい場合は慣れた呼び方で呼びかけてから話をしてあげてください。身体のどこかに触れてあげると安心できます。席などは替えないで、いつも同じ動きで行動できるようにしてあげたいですね。テーブルの上にはハッキリした色のものを敷いたり、鮮明な色の器を選ぶようにしてあげましょう。手探りしていると隣の人のお皿と区別がつかなかったりしますので、お盆などを使って領域をハッキリすることも良いようです。食べ物を説明するときも色や盛り付け方なども話すことで、一層おいしく召し上がれると思います。それから、見えないと恐くて外に出られなくなり、運動不足にもなります。見えないからこそ、空気の冷たさや花の香りなどで四季の移り変わりや天候などを感じていただきたいです。短い時間でもかまいませんからどうぞお散歩に出てあげてください。

 お世話をすることが大変なのはよく分かっているつもりです。そのことをご本人に隠す必要はありません。無理をすることもありません。

 ご高齢の方の多くがお医者様処方の薬、またご自身の飲みなれた薬を服用されていると思います。介護職としての経験で、薬に関するトラブルがいくつかありました。今回は薬について書いてみたいと思います。

 「お世話は大変だけれど、あなたのことが大切だから大丈夫です。」と言ってあげられたらどんなに喜ばれるでしょう。そして色々失敗してもどうぞ温かく見守ってあげてください。いずれ私たちも行く道なのですから。24時間365日、介護の日々を送られている方々に心からの敬意を表します。私たち介護職は応援団です。

(ひだまり日記 2003年1月号掲載分)
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# by hidamari-blog | 2003-01-28 12:42 | 高齢者

元旦号:子どもの心に思いやりの種を

皆様あけましておめでとうございます。本年も〔ひだまり日記〕よろしくお願い申し上げます。

 先日、ひだまりに横須賀の中学二年生が二人見学に来ました。その一人、Kちゃんはこの地域の小学校に通っていましたが、五年生になるときお父さんの転勤で横須賀に越しました。Kちゃんが四年生のとき、小学校で手話を体験する時間があり、私が講師として参加しました。それがきっかけで十人ほどの子供たちが手話グループを作り三年間私が教えました。私は以前緑区に住んでいたのですが、そこでも子供や中学生に教えていました。手話だけを教えるのは本意ではありません。子供たちの柔らかい心に「思いやる気持ち」の種を蒔くのが目的です。障碍のある方だけではなく自分より年下の子やお年より、ねこ・犬・小鳥・虫など命あるものすべてに自分の出来る方法で思いやりをあらわすことの出来る人になってほしいと思うのです。手話はそのきっかけの一つです。

 興味を持つことで聴覚障碍のことを知るチャンスが出来ます。聴覚障碍とはどういう障碍なのか?どんなお手伝いが必要なのか?目の障碍は?お年よりの場合は?・・・と、思いが広がっていってほしいのです。これこそが心のバリアフリー(生活する上で障壁となるものをなくすこと)につながると思うのです。建物や道路がバリアフリーになったとしても、人の心の中に壁(偏見や無視、無理解)があっては何の意味ももたないのです。

 そんな思いで蒔いた種から小さな芽が出てきています。Kちゃんは手話通訳士になる勉強をしたいといっています。あの四年生の中には、今この地域の中学校で手話部に入ってがんばっている子もいます。緑区の子の中には福祉専門学校に入って介護職を目指している子がいます。職業として選んでくれなくてもかまわないのです。「手伝って」という声を聞かなくても「お手伝いしましょうか」と声をかけられる人であってほしい。私の知らないところであの子達が〔どこかでどなたかにやさしい手を差し伸べてくれている〕と信じているのです。そう考えると子供たちに関われることをうれしく思うし、とても幸せな気持ちになるのです。

 ただ心配なのは、やさしい気持ちで勇気をもって声をかけたのに「結構です」と断られることです。私自身何回もそういう経験をしています。根っからのおせっかい焼きですから、そんなことでめげませんし馴れていますが、子供たちの心が傷つくことは心配です。もし、子供さんがそういう経験をしたと分かったらぜひアドバイスしてあげてください。「その方はお手伝いがなくても大丈夫だったのでしょう。お手伝いしたかどうかが大切なのではなくて、お手伝いしようとしたことがとても大事。その方を無視していないこと、その方が社会の中で孤立していないことを知っていただけてよかった。あなたのお手伝いを必要とする方が必ず居られるから、出来るときがあったらこれからも声をかけてあげて」と。そして何より大人たちがお手本を示してあげてほしいです。もし断られたときには一言「そうですか、ではお気をつけて」とさらっと言えると素敵ですよね。

 そしてもう一つ。お手伝いの方法が分からないときです。車椅子の方が居られても操作の仕方が分からないとか、白杖(目の不自由な方の杖)の方を誘導することなど。その時はご本人に伺うことが一番です。基本的な方法を勉強するチャンスがあったらぜひ体験していただきたいですが、介助方法が違う場合もあるので「どうお手伝いすればよろしいですか」と謙虚に聞いたほうが良いと思います。こちらの知識や方法を押し付けないことも大切です。そして、無理をしてやらないこと。せっかくの好意が相手の方にとって危険だったり自分が怪我をしたりするようでは意味がありません。基本は〔出来るときに出来ることを出来るだけ〕です。電車の中でお年よりに席を譲ることと、車椅子を四人がかりで駅のホームへ運ぶこと・・大きな違いがあるように見えますが心の豊かさは同じです。それが何より素晴らしいと思うのです。

今回もありがとうございました、またお目にかかります。

(ひだまり日記 2003年元旦号掲載分)
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# by hidamari-blog | 2003-01-01 10:55 | 子どもたち



ほっとひといき、ついてください
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