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ひだまり日記

9月号:「呼び寄せ」の持つ危険性

「呼び寄せ」という言葉、本来は「呼び寄せる」(呼んで集める)という動詞でしょうが介護用語としては「別の土地に暮らしている両親などを子供の住む地に連れてくる」という意味になります。同居かどうかは別ですが、お年寄りにとってなれない土地での「安心で不安」な暮らしが始まります。

私はこのことが日本の高齢者福祉の大きな穴の一つだと思っています。介護保険は「在宅福祉を充実させる」事が目的のはずでした。在宅福祉というのは、その人が住みなれたところで安心して暮らし続けるための必要な支援をすることです。にもかかわらず、安心して暮らし続けることが無理としか思えない、お寒い福祉サービスしかないので、呼び寄せることになるのです。

年老いて新たな環境に入ること・慣れることの難しさは想像できると思います。ご本人が暮らし続けたいと言っても、ご近所の方等から「お年寄りだけで住んでいるのは危ない・火でも出されたら困る」などと悲しい言葉を言われたらご本人の意思を無視して呼び寄せを決断するしかないのです。

もしヘルパーの派遣がもっと多く、夜間の巡回もあり、訪問医療(医師・看護師)が充実し、住宅改造がきちんと廉価(介護保険でまかないきれれば最もよいが)でなされるようであったらご本人の希望どおり暮らし続けられるでしょう。そのとき、子供たちの役割は?回数多く顔を見に行き、状態にあった必要なサービスをきちんと調べ、契約をし、場合によっては金銭管理をし、サービスがきちんと行われているか・ご本人が納得しているかなどを確認する責任を負っているのです。

そして「あなたのおかげで、自分たちは幸せに元気に暮らしている」ことを伝える…という最も大事な親孝行をして帰ることです。これが実践されれば、親は子供に気兼ねすることなく自分らしく過ごし、住み慣れたところで暮らし続けることが出来るのです。北欧の福祉はこれが実践されているのだそうです。北欧が福祉先進国といわれる理由はこういう部分だと私は思っています。ところが、日本の今の福祉行政では望めません。

では、どうしたらよいのでしょう。私が今言えるのは、早い決断ということだけです。ご本人に「老い」が見えたと家族が感じたとき、「これからどうやって過ごして行く?」ということをご本人を交えてきちんと話し合うことです。(以前にひだまり日記で書かせていただいた「エンディングノート」があると話しやすいのですが)そして、もしご本人の気持ちと一致し、可能であれば「呼び寄せ」に進むことです。この時点であれば、ご本人の気力もまだ十分残っているので新しい環境に慣れる努力が可能であり、ご自分の持ち物の整理もご自身の判断で出来るわけです。さらに、介護サービスを選ぶのにもご本人の意思を確認すること・利用していく中で不満や不便がないかなど話し合うことも可能でしょう。

つまり、ぎりぎりの状況になってから呼び寄せとなるとご本人の意思を無視してしまい、同時に受け入れる側も準備不足な状態ですから様々なトラブルが起きてきます。同居している家族が本当に納得していない状況下で各自の生活リズムが崩れてしまう、そのリズムを調整し、不満を解消するために介護サービスを使うことになります。が、混乱しているご本人をお世話なさりながらでは役所へ出向くことや見学に行くなど、ご本人に合う良いサービスを選択する余裕もないわけです。

流れはお分かりいただけたと思います。早期決断、早期実行が一番なのです。とはいえ、これは理想論に近いです。普段からのコミュニケーションがうまくいっていないと難しいです。また、他の子供たち(兄弟)との問題もありますから、かなりのエネルギーを必要とします。

だから、一日伸ばしになってしまうのです。我が家も同様ですから偉そうなことは言えないですが、「呼び寄せ」ということがどういうことなのか、客観的にどういうことが起きるのかをを知っていただきたくて書きました。
「住み慣れたところで安心して暮らし続ける」・・・このことが可能な日本になることを願いつつ、中尾にあるちっぽけなNPOは毎日「おせっかいやき」をしています。何かご相談がありましたらご遠慮なくご相談下さい。何かお役に立てることがあるかもしれません。

(ひだまり日記 2005年9月号掲載分)
by hidamari-blog | 2005-09-28 15:01 | 高齢者
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