ひだまり日記

7月号:認知症の方と周囲の方たち

テレビ番組などで痴呆(認知症)のご本人が顔を隠すことなく病気のこと・生活のこと・不安なことなどを自らの言葉で話されるようになりました。若年性痴呆(アルツハイマー・脳血管性等)の方とご家族を取材したものを見ましたし、介護職の勉強会で初期認知症のご本人が発表してくださったこともあります。

他の病気でご本人が病名を知って、今後の治療方法・生活のことなどをきちんと考えることはとても大切なことです。言うのは簡単ですが、ご本人の強い精神力が必要だと思いますし、その様子を見守るご家族の思いはいかばかりかと思います。(*「認知症」という言葉がまだ定着しないので、以下「痴呆」と表します)

痴呆の当事者が病名を知ったときどんな思いになるのでしょうか。痴呆というのは決して良いイメージではないでしょう。読者の皆様はどのような様子を思い浮かべられるでしょうか。物忘れ?徘徊?暴力?…。いずれにしてもご自身だけでなく、ご家族や周りの方をも巻き込んでしまうのだという思いが心の中を大きく占めることでしょう。自覚することがどれほど悲しく不安かと、想像するだけでも心が痛みます。

このところ私は仕事上だけではなく私的な時にも「初老期痴呆」「若年性アルツハイマー」の方と出会うこと・ご相談を受けることが多くなりました。この中の何人かの方はご本人が病名をご存知です。当初は病気を受け入れられず気持ちが荒れて、ご家族にあたったり、必死で隠して職場などで失敗を繰り返したということが起きたようです。

その後、専門分野の人々と関わることでいくらか気持ちが楽になり「今をどう過ごすのが良いか」家族も含めて話し合いをするようになったといいます。現在の医療では完治することは難しいといわれている病気ですから向き合っていくしかないのだと気持ちを決めていかれるようです。

とはいえ、若年性アルツハイマーの場合は、まだまだ現役で働いていらっしゃる時期ですから生活に大きな変化が起きてしまいます。現実的な不安・将来への不安・恐怖が日々ご本人と周りの方を苦しめるのは事実です。そのような混乱の中にいらっしゃるご家族を取り巻く周囲の者たちに何が出来るのでしょうか?するべきことは何でしょう?

不安の一つになるであろう近隣の者たちへの気遣い(恥ずかしい…噂になる…)が無用だったら少し気持ちが楽になると思うのです。ひだまり日記を書かせていただく中でずっと言い続けてきましたが、「痴呆(認知症・アルツハイマー)は恥ずかしいことではありません」。前世がどうとか、普段の生活がどうとか、仲間を作らないからどうとか…そんなことではありません。

介護保険がこれほど社会に根付いている時代、これほど多くの情報が流れている時代です。「いつ誰がなっても不思議では無い病気」ということは十分お分かりのはずです。暖かく見守っていることを言葉や態度で伝えてあげてください。地域だから出来る「さりげなく見守る」というお手伝いがあるのです。

安心して徘徊できる…そんな地域が増えたら痴呆を恐れる気持ちが少しは和らぐと思うのです。何だか様子がおかしいと思ったらきちんと病院で診察を受け(つらいと思いますが、できれば精神科へ。適切な投薬などにつながります)、介護保険の認定・障害者手帳の交付(若年性アルツハイマーの場合は受けられることがあります)を受け福祉サービスを躊躇無く利用してください。

お付き合いのある方の様子がおかしいなと思ったらご家族にそれとなく教えて差し上げてください。家族が気づかない昼の時間帯にこれまでと違う行動をなさることがあるからです(毎日同じものばかり買っている・衣類が季節に合っていない・特に用がないのに何回も家に訪ねてくる…)。おっしゃりにくいと思いますが、結果的には痴呆を早く発見し、進行を抑えることにつながり、心無い人たちから笑いものにされずにすむのですから。

家族だけで介護することが美徳のように思われがちですが、絶対に間違っています。家族が自分の生活をこれまでのように続け、心身ともに疲れている状態で介護しきれるほど簡単な病気ではありません。先の見えない介護でもあります。どうか一刻も早くご家族が「痴呆」を受容して、福祉サービスをうまく取り入れ、少しでも介護を楽にしてください。楽になったと心にゆとりが出来たら、にっこり笑いかけてあげてください。ご本人はご家族の笑顔が一番うれしいのですから。

相変わらずの生意気をお許しください。

(ひだまり日記 2005年7月号掲載分)
by hidamari-blog | 2005-07-28 14:59 | 認知症
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