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ひだまり日記

4月号:全ての障害者が善人ではない

拉致被害者の方を支援する会としてNPO法人が偽募金を集めていたと言うニュース。宗教としか思えないNPO法人からの手紙。どうしてこんなところを「特定非営利活動法人(NPO法人)」として許可するのかと、怒りを覚えます。

ひだまりは特定非営利活動法人です。デイサービス事業所になるための「法人格」。悩んだ末に決めたことです。申請には膨大な雛型にそった書類の提出が必要です。書類が揃い、非営利であれば内容を吟味することなく認証するようです。でも、実際にNPO法人を名乗る悪徳グループがたくさんある以上、安易に認証するのは問題です。そして、もう一つ今回あえて批判を覚悟で言いたいのは「障害者=善人」とは限らないということです。

ひだまりの前身「地域ケア拠点グループひだまり」は私ともう一人の女性・Y が11年4月にアパートの2部屋を借りて始めました。Yは難病の膠原病が原因で車椅子の生活でした。介助ボランティアで出会った人です。話していて「地域で福祉」という思いを持っていると知りました。正直言うと第一印象で「この眼は苦手だな」と感じたし、具体的な話の中にいくつものズレがありました。が、病気と戦い障害を持ちながらも人のために力を使いたいという思いに、自分の一抹の不安を押さえ込んでいました。

Yは人生経験が多く、資格はないもののワープロ、経理何でもこなし、NHK放送大学の学生でした。移動が困難なYは事務・電話番を担当し、私はボランティア活動全般・Yの身の回りの世話を担当しました。「もうお金ないよ」と言われると銀行に行き・集金したお金はYに預けました。Yは生活保護受給者なので給料は不要でした。貧乏ボランティアにとってはありがたかったです。

みなさん、ここまでお読みになって想像がお付きでしょう。そうです、約80万円Yに騙されてしまいました。ある日Yが入院することになりその日まできちんと計算できていると言って預けていったはずの帳簿・現金。開いてみると、ある日から帳簿が空白なのです。

私が無知だからだと思い、仲間にも見てもらったのですが皆「おかしいよ」というのです。帳簿と首っ引きの毎日、「疑ってはいけない」と何日も悩み、食事も睡眠も取れない状態になってしまいました。見舞いに行ったときに尋ねると「おかしいわね」というだけ。…結局退院してきたYに「もう一緒に仕事は出来ない」と伝え縁を切りました。が、隣室に居座っているので毎日とてもつらかったです。

何より毎日遊びに来てくれている子供達にYに近づかないでとも言えず、本当に苦しみました。人間不信ということをそのとき初めて知りました。しばらくしてアパートの取り壊しが決まりひだまりは引っ越しましたが、Yはそれからもずっと居座っていました。

Yの部屋には目の不自由な女性がご家族ぐるみで出入りされていたし、パソコンを一生懸命運び込んでいる女性達も見かけました。「気をつけて…」というべきかと悩みながらも結局声をかけることはできず、その方々が騙されないこと祈るだけでした。Yがやっと引っ越してアパートは新しくなりました。ある日、YがガイドヘルプのNPO法人理事長の肩書きで大きなシンポジウムのパネラーとして出ている記事を見ました。今度は誰をまきこんだのだろうと思いながらも自分の目の前にいなくなっていることにホッとしていました。

ところが、昨年一本の電話がかかってきました。私と話したいと必死で言っているのです。何だろうと思ってお目にかかると、車椅子の女性と介助について来た女性のお二人が「Yを知っていますか」と。二人はYのグループの理事さん達でした。車椅子の女性は「資金が足りない」と言われるたびに一生懸命貯めてきたお金を都合してきたらしいのです。

総会のための収支を出すようにとYに言うと、経理処理がハッキリしない。おかしいと思い尋ねるとあれこれ理屈を言って開き直る。私の時よりさらに悪い仲間がついているらしく、あくどくなっているようでした。私が被害にあったという情報をどこかから得て尋ねてこられたのです。額ははるかに多い約400万円とのことでした。その後、細かい情報はありませんがグループは解散したようです。先日友人からYがまた、NPOを立ち上げるらしいと聞きました。恐ろしいです。また騙される人が出るでしょう。Yは「善人」にならないでしょう。

福祉がお金になると思う人がたくさんいる社会です。寄付をしようと思った時・福祉サービスを使おうと思うとき、「NPOだから大丈夫」「ボランティアだから安心」「障害を持った方だから気持ちを良く分ってくれる。信じられる。」などと絶対に思わないで下さい。

淋しいことですが、まず疑って調べてからにしてください。「基準は?」と聞かれても答えられませんが、私の反省としては「第一印象を信じればよかった」と思っています。人間不信を消してくれたのは人間でしたが、心の中に傷は残っています。福祉に関わる人間が人の心に傷をつけてはいけないと心から思います。嫌な話でしたが、皆様心の片隅に止めておいてください。

(ひだまり日記 2005年4月号掲載分)
by hidamari-blog | 2005-04-28 14:56 | ボランティア
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