ひだまり日記

4月号:何で徘徊してしまうの

 徘徊という言葉は痴呆高齢者のイメージそのものになってしまうぐらい、問題行動として取り上げられます。痴呆と診断された方全てが徘徊をするわけではありませんが、介護される方にとって日常生活に大きく影響してしまう症状であることは事実です。徘徊(帰宅願望)が強いとショートステイを断られることもあるようです。特別養護老人ホームのショートステイが断ることは無いと思うのですが、その他の施設の場合徘徊に対応できる施設設備が無いこと、職員体制がとられていないこともあって断らざるを得ないのでしょう。

 徘徊するご本人は必死です。家に帰らなければいけない(生家・一番思い出のある家・建て直す前の家など様々)・しごとにいかなければならない(自分が一番輝いていたころの職場)・子供を迎えに行く・買い物に行くなど。“早く行動しなければいけないのにどこだか分からない場所に自分はいる”のです。出かけようとするのですが、あちらこちら鍵がかかっていて出られない。そばにいる人に「出かけたい」と頼むと、「もう少し待って」と言われたり、無視されたりするのでますますあせります。「ここはどこだろう?自分はどうしてここにいるのだろう?早くここから逃げなければ…」と混乱が増します。恐怖になっていきます。施設にいるときだけではなく、在宅でも同じです。今住んでいる家がずっと住んでいる家であったとしても、ご本人の「記憶の家」とは違うことがあるからです。(ご本人の意識が現在40歳・50歳であれば家はもっと新しいはず、周りにいる人ももっと若いはず)そのような状況から必死で逃げたいのですから最悪の場合、鍵やドアを壊してでも脱出してしまいます。この繰り返しは痴呆の状態を悪い方向に進めます。

 徘徊に出ようとするとき、止めずに出かけさせてあげ、頃合を見計らって上手に連れ帰れることが一番良いのです。言うのは簡単ですが実際一日に何回も繰り返されると、介護者のほうは安心してトイレにいくことも眠ることも出来ません。

 痴呆の一症状が永遠に続くことはなく、徘徊もいずれ治まります。でも、いつ終わるか分からない状態に介護者が心身ともに疲れてしまうと後が続きません。どうか、うまく福祉サービスを使ってください。ショートステイを使うと、後が悪くなると言うのを聞いて利用を控える方が居られます。確かに前記したように、知らない場所に置き去りにされたと思い、混乱して状況が悪化することはあります。だとしても、日々の厳しい介護生活に一息いれなければいけません。主たる介護者が倒れたら家族全部の生活が危機的な状況になってしまうのです。ご相談をうけていると、あまりにも疲れて「自分が倒れてぎりぎりの状況になれば、家族や親戚に本当の大変さが分かると思う。倒れるか逃げるかしたい」とおっしゃる方が居られます。よく分かります。でも、実際にそうなると数日介護から離れられても、家族との関係や後始末がもっと大変になってしまうようです。人の目や実情を理解してくれない親戚の方の意向を気にせず、ショートステイを使う決心をしてください。なかには意外と順応して「ホテルに行ってきた」と平気な顔で帰ってこられる方も居られますからとにかく試してみてください。

 一般の皆様にお願いします。街中で様子のおかしいお年寄りを見かけたら思い切って声をかけてみてください。「様子がおかしい・時期に合わない服装をしている・前方を見つめて必死で歩いている・やたらと多くの荷物を持っている・逆に何も持っていない」などがポイントでしょうか。なんとなく様子が変?と言うのが一番合っているのですが。「どちらにいらっしゃいますか?」と声をかけ、とんでもない場所を言っていたらまず間違いないでしょう。(背中や上着の襟裏に住所や名前が書いてある場合もあります)「お疲れのようだから一服されたらどうですか」というようなことを言って様子を見ながら地域ケアプラザや警察などの公的施設に連絡していただけると〔徘徊高齢者SOS〕という組織ができていますので対応してくれます。

 また、これからの季節は脱水症状をおこしやすいので、もし余裕があれば水分を差し上げていただけると助かります。(冬は凍死の危険性、夏は脱水から死に至る危険性があるのです)もしも、その場で声をかける余裕が無かったり、あまり関わりたくなかったら「うろうろしているひとがいる」ことだけ警察などに連絡していただけますか。それで十分です。心配している家族の方にとって町の人々の協力は心強い味方です。よろしくお願いします。

(ひだまり日記 2003年4月号掲載分)
by hidamari-blog | 2003-04-28 12:57 | 認知症
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