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ひだまり日記

1月号:耳が・目が不自由になったとき

 耳が遠くなること、目が見えにくくなること。年をとってくればあたりまえの事です。ところが、このあたりまえのことはご本人と介護家族をとても苦しめます。

 "耳が聞こえない"・・家族が目の前にいるのに、音を消したテレビのように口をパクパク動かしているだけなのです。その人たちの声がどんな声か知っているのに自分の耳に入ってくる音の中にその聞きなれた音が無いのです。耳の近くで話してくれればやっと聞き取れるが少しでも距離があると聞こえないのです。家族もつらいです。大きな声を出さないと聞こえない、忙しいときでもそばに行って耳元で話さなければならない。一回で分かればいいけれど何回も聞き返されるとイライラしてつい声を荒げてしまう。面倒だから話し掛けたくない。お年寄りは声を荒げられると恐いですから聞き返さず適当に返事をします。聞き取れていませんから失敗をしてしまい、結局家族に迷惑をかけ疲れさせてしまうという悪循環。

 “目が見えにくい”・・・慣れた家の中では動けますから家族は見えにくいぐらいと思うのですが、実はほとんど見えないということが結構あります。好きだった針仕事も出来ない・テレビも音だけ・ゲートボールも出来ない、何もすることがありません。目の不自由な方は他の感覚が研ぎ澄まされていくといいますが、高齢で視力が落ちた場合、他の感覚が鋭くなるにはかなりの時間を要するようです。テーブルの上のものを手探りでこぼさずにとること・上手に食事をすることなどは本当に難しいです。突然話し掛けられても、自分が話し掛けられているのかすらわかりません。音がどこから出ているのか聞き分けること・声だけで誰なのか判ることはとても難しいようです。症状が進んで視力がなくなると光を感じることも出来なくなります。今が朝なのか夜なのかも一人では判断できません。家族の行動やテレビ・ラジオの音で判断することになります。

 それぞれこの様な状況の中でお年よりは苦しみ、恐怖や不安から逃げるために痴呆の症状を呈してきます。家族は活動しているのに自分には出来ることが無い。自分の殻に閉じこもるしかなくなります。思い出すのは昔のこと、バリバリ頑張っていたこと・自分を必要としていた人たちがいたこと…。時間は酷なほどたくさんあるのです。想い出もあふれるほどあります。何回も何回も繰り返し考えているうちにだんだん現実と思い出の境がわからなくなるのです。

 新しい情報は入る余地がなくなります。これが痴呆そのものなのかもしれないですね。耳が聞こえなくなること・目が見えなくなること。いずれも孤立(複数の人の中にいるのに一人ぼっちになってしまうこと)してしまうわけです。人間は孤独には耐えられるけれど孤立には絶えられないのだそうです。想像以上に家族の忍耐・努力が必要ですが、どうか独りぼっちにしないであげてください。お年よりは怯えているのですから…。

 耳が遠い場合は、聞こえのよいほうの耳元でゆっくり話してあげてください。ラップの芯などを使って話すと聞き取りやすいです。ジェスチャーを入れるとさらに分かりやすいです。メモ帳を用意して書きながら話すのも良いですね。聞き取りにくい言葉もありますので、別の言葉に置き換えることも大切です。「みんなで笑うとき」には特にさびしく感じるようですから、何が面白くて笑っているのか、かいつまんで話してあげてください。

 目が見えにくい場合は慣れた呼び方で呼びかけてから話をしてあげてください。身体のどこかに触れてあげると安心できます。席などは替えないで、いつも同じ動きで行動できるようにしてあげたいですね。テーブルの上にはハッキリした色のものを敷いたり、鮮明な色の器を選ぶようにしてあげましょう。手探りしていると隣の人のお皿と区別がつかなかったりしますので、お盆などを使って領域をハッキリすることも良いようです。食べ物を説明するときも色や盛り付け方なども話すことで、一層おいしく召し上がれると思います。それから、見えないと恐くて外に出られなくなり、運動不足にもなります。見えないからこそ、空気の冷たさや花の香りなどで四季の移り変わりや天候などを感じていただきたいです。短い時間でもかまいませんからどうぞお散歩に出てあげてください。

 お世話をすることが大変なのはよく分かっているつもりです。そのことをご本人に隠す必要はありません。無理をすることもありません。

 ご高齢の方の多くがお医者様処方の薬、またご自身の飲みなれた薬を服用されていると思います。介護職としての経験で、薬に関するトラブルがいくつかありました。今回は薬について書いてみたいと思います。

 「お世話は大変だけれど、あなたのことが大切だから大丈夫です。」と言ってあげられたらどんなに喜ばれるでしょう。そして色々失敗してもどうぞ温かく見守ってあげてください。いずれ私たちも行く道なのですから。24時間365日、介護の日々を送られている方々に心からの敬意を表します。私たち介護職は応援団です。

(ひだまり日記 2003年1月号掲載分)
by hidamari-blog | 2003-01-28 12:42 | 高齢者
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